こだわり

看板の電話番号や経年劣化について

看板の作り方

情景ジオラマ(模型)を楽しくするアイテムとして「看板」があります。
私の場合、ホーロー看板や広告看板は、ネットから探してくる場合がほとんどです。
気に入った看板は、その実寸も調べます。
その寸法をもとに縮尺を行い、プリンターで出力したあとにアルミ板に貼ります。
看板らしくなったところで、ウェザリングを行いジオラマ内の壁などに設置をします。

  1. 看板をネットで探す
  2. 看板の実寸を調べる
  3. 看板をジオラマのスケールにあわせて縮尺する
  4. 縮尺したデータを印刷する
  5. 印刷した紙をアルミ板に貼る
  6. アルミ板のウェザリングを行う

これが私の看板作りの工程です。

電話番号と経年劣化

完成した作品をSNSなどに発表すると、いろいろなご意見をいただきます。

少年
少年
こんなに古い家屋なのにフリーダイヤルの看板は不自然ですよ~♬

フリーダイヤルサービスは、1985年12月3日に日本電信電話(NTT)によって開始されました。1985年は、昭和60年ですので、看板のあるその時代背景の家屋としては、ウェザリングが強すぎて看板との違和感を持たれたようです。

フリーダイヤルが書かれた看板を設置するのなら、もう少し新しめの家屋でないと不自然だと言いたいのだと思います。

作品を見る人が切り取る時間

ジオラマ作品を見てその雰囲気を一瞬の時代だと切り取る人は、看板の電話番号などから家屋の劣化具合に違和感を感じるのかもしれません。

ジオラマ作品を見て昭和中期から最近に至るまでの時間を感じるとる人にとっては、古い家屋にフリーダイヤルの看板があっても、それも家屋の歴史として感じるので違和感を感じないのかもしれません。

つまり、昔からそこに家屋があって、フリーダイヤルが開始された瞬間にも家屋が存在していて、今に至ると感じる人は、劣化が激しく進んだ家屋にフリーダイヤルの書かれた看板があっても自然だと感じるようです。

作品の名前

もし作品に「1960年代のある風景」という名前を付けるのであれば、フリーダイヤルの看板は良くありません。時代背景が合わないからです。
作者は、こういうところに注意を払わないといけません。

単純に作品名を「昭和の駄菓子屋」とすれば、いろいろな看板を時代背景をあまり気にせず作り込むことができます。

経年劣化の表現

当たり前ですが、同じ場所に設置されるという条件であれば、フリーダイヤルの書かれた看板より昔の時代の看板は、より汚れている必要があります。
昔の看板は、フリーダイヤルの看板より長く設置されているので当然です。

ここからが面白いのですが、屋根のある軒下と外のトタン壁に設置された看板の場合はどうでしょうか?

雨ざらしの環境とそうでない環境、フリーダイヤルが書かれている看板とそうでない看板の時代背景… 一気に考えるべき要因が増えてきます。
それぞれの看板の歴史や設置場所の環境を想像して、単一にならないようなウェザリングを行うことが大切です。

とはいえ、元も子もない話をしてしまうと‥‥
その看板の歴史を比べてみても、そこに設置される順番が逆という場合もあると思います。

例えば、フリーダイヤルが書かれた看板を取り付けた後、数年後にフリーダイヤルが開始されたとき以前の新品の看板を取り付ける場合もあるということです。
こうなると、フリーダイヤルの看板の方が経年劣化は進んでいなければなりません。

このように考えていくと、何が正解なのかわからなくなってしまいます。

けれども、唯一言えることがあります。
それは、そういうことを考えながら作るということが大切だということです。

作品を作る私は、オロナミンCとボンカレーの看板を同じ日に設置します。
けれども、実際は、メーカーが違います。
きっと、それぞれ違うメーカーの営業マンが、別々の日に看板を設置しに来たはずです。そうしたところを考えてウェザリングを行うと、経年劣化にも違いが生まれ、そのジオラマの中に物語(ストーリー)が生まれてきます。

たかだか看板ですが、看板設置の裏側にある背景から、各メーカーの営業マンの物語、店主と営業マンのやり取り… 店主の性格なども想像が膨らみます。
店主の性格は、家屋周りの情景にも影響を与えます。
片付けが苦手な店主とそうで無い店主とでは、家屋の周りの草の生え方が違います。

そうやってどんどん想像が膨らむところがジオラマ作りの楽しいところです。