中沢工務店
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昔は、どの町にも近所の工務店というものがありました。
ちょっとした台所の修理や雨どいの修理…そういったものを何でも引き受けてくれました。
中沢工務店は、私の中で実在する田舎の会社です。
中沢工務店の社長
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中沢工務店の社長は、背は小さいけれど器が大きく、面倒見の良い人柄です。
あくまでも、子供の頃の記憶ですが、その社長はカブが愛用車です。(ここは想像)
職人気質で、道具を大切に使う人でもありました。
愛用のカブはいつも整備をしてピカピカに磨いていましたが、長年愛用しているので経年劣化は所々進んでいます。
この日は、前日まで降った雨のせいで道がぬかるんでいました。
田舎道なので、舗装をしていない畑道を通り、お客様のところに行ってきた帰りです。
車輪には、泥がこびりついています。
りんご箱と結び目
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お歳暮替わりにご近所からいただいた「りんご」は、木箱に入っていました。
その木箱を道具箱代わりにして、社長はカブの後ろにくくりつけて、町のどこへでも出かけて行きます。
木箱は荒縄でくくりつけられ、結び目は左側。
これは、作業現場にりんご箱を持って行くときに、結び目が車道側にあっては車にはねられるかもしれないという社長の危機管理です。
東京でも田舎でも、昭和の時代にはこうしたご近所同士のつながりがありました。
時代が進んでも、私のような人間は、こういうつながりが欲しいと思います。
カブを見ては、そんな幼少時代を思い出しています。